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出張教室報告(ラ・サール学園(中学校・高等学校))

ー西村あさひの法教育プロジェクト

出張教室のきっかけと準備

西村あさひ法律事務所・外国法共同事業では、中学校・高校にも弁護士・法曹の仕事がどのようなものか伝える法教育チームがあるところ、ラ・サール学園(中学校・高等学校)の卒業生である木村響弁護士が出身校にも弁護士・法曹としての仕事の面白さを是非伝えたいという思いで国語科教諭の西本志織先生にお声がけし、何度かご相談を重ねて出張教室を企画しました。出張教室では、生徒に異なる立場で法的な問題を実際に考えてみるという経験をしてもらうため、講義形式ではなく、ケーススタディを作成して生徒にそれぞれの役割を与え、ロールプレイングをしてもらうこととし、限られた時間の中で中学生や高校生にも弁護士・法曹の面白さを感じてもらおうと、ケーススタディの作り込みは、担当弁護士の間で何度もディスカッションを重ねて入念に作り込みました。出張教室では1学年を4つに分けて各弁護士が1人ずつ担当して授業を行いました。これまでに、同校では、2022年・2023年に1回ずつ出張教室を行いました(2022年は中3(160名)・高1(240名)、2023年は中2(160名)、中3(160名)を対象)。

出張教室の概要

ケーススタディは、日本の化学メーカーと発展途上国にある化学メーカーが現地で石けんを製造するJVを設立したところ、そのJVの取引先のヤシ農園において児童労働が行われていたことが発覚した場合にどのような対応が考えられるか、日本の化学メーカー、発展途上国の化学メーカー、農園主、農園で働く子供の母親の4者に分かれて交渉してもらうというものでした。児童労働は何が問題なのか、農園と取引をやめることで児童労働は解消されるのか、契約交渉を行った場合にはどのような解決策が見いだされるのか、当事者の自由な契約交渉に委ねるべき問題と法律が介入する必要がある問題の線引きをどのように考えられるかなど、広がりがあり、取り組みがいのある内容となりました。

 

出張教室を行うまでは、中学生・高校生には少し難しいかとも心配していましたが、実際には、休憩時間にも熱心に議論を続ける生徒もいるなど、活発に議論をしてもらい、大いに盛り上がりました。110分間の授業時間のうち約1時間をグループディスカッションに充てましたが、時間があっと言う間に過ぎていきました。

 

放課後には希望者(約20名)を対象に座談会を開催し、なぜ弁護士になろうと思ったかというキャリアの話から、受験勉強のやり方や文理選択など、幅広く、生徒の皆さんとお話ししました。

 

ご担当の先生や生徒の方からいただいた感想

生徒の皆さんも、グループディスカッションという講義形式を楽しみながら、弁護士という職業についてより知ってもらうきっかけとなったようでした。弁護士という職業や法律という分野になじみがないとおっしゃっていた皆さんからも、全員参加の講義を通じて、多くの学びや気づきがあった旨、フィードバック頂きました。

 

「話し合いを進める中で相手との交渉が上手くいかなくなったときに、別の案で互いに利益のあるまとめ方をするのが難しかった。」
「立場を変えてみたときの世界の見え方の変化が興味深かった。また、誰が問題を解決するキーマンとなるか、誰を核として考えればよいかといった話も面白かった。」
「皆が素直に納得できる事実を大事にするということは、弁護士にならなかったとしても必要なことだと感じた。」
「リーガルマインドは弁護士だけに必要な考え方ではなく、日常でも重要な視点だと分かって面白かった。友人と議論するうちに自分の考えが広がって、それを多面的に修正していく点は興味深かった。」
「みんなで話し合い納得する考えに至るのが楽しかった」
「今まで深く知らなかった『弁護士』という職業を実際に話し合うことによって知ることができ楽しかった」
「文系か理系かで迷っているところ、自分の周りに理系が多いため理系に行こうかとも考えていたが、今回の講演会で文系にも興味がわいた」
「弁護士といえば裁判を行っているイメージしかなかったので、国際的な案件に関与していることを知り、新鮮だった」

 

2022年の講義は西本志織先生と一色慶哉先生、2023年の講義は丸山晃先生と中村亮先生にご協力いただきました。西本先生からは、
「弁護士という職業の存在は知っていても、実際の仕事内容についてはよく知らない――そんな生徒は案外多いものです。今回の出張教室を通じて、弁護士の職務や法律の役割などはもちろんのこと、グループディスカッションの経験を通じて、多くの生徒がリーガルマインドの重要性を実感したことも大きな収穫です。授業の折、先生方のご指導宜しきを得て難しい内容にも熱心に取り組む生徒たちの、生き生きした姿がとても印象的でした。また、この経験から法曹への関心が芽生え、法学系への進学の意志を固めた生徒も少なからずおり、貴重な機会をいただけたことに大変感謝しております。」 という感想をいただきました。

 

担当した弁護士の感想

木村 響 弁護士
非常に白熱した110分間の授業でした。①事実と評価を切り分けて考えること、②同じ事実を前にしても、ものの見方(評価)は立場によって様々異なること、③議論すると互いに新しい発見を得られること、の3点を習得してもらえたと思います。将来、大小様々な選択に迷ったときに、ふと思い出してもらえれば嬉しいです。

福島 惇央 弁護士
複雑なケーススタディを用いたのでうまくいくかやや不安もありましたが、普段授業などで学んだ知識を生かしつつ、グループディスカッションを通じて活発に議論してもらえました。文系・理系を問わず、社会的な問題をより身近に捉えていただけたらと思いますし、また、その中で法律(家)の果たす役割を考える機会となれば幸いです。個人的にも出身校で後輩に授業できたことは良い思い出となりました。

吉井 一希 弁護士
2023年度の中学2年生及び3年生の授業を担当いたしましたが、文系・理系の進路選択の予定を問わず、皆さんに関心を持って頂き、鋭い意見の連発で、クラス全体で議論を深めることができました。グループディスカッションを通じて、立場ごとに譲れない点があること、そのような利害を公平に調整するための道具として法があるが、その法の設計には様々な可能性があること、利害関係者が国境をまたいで存在する場合には法の設計にチャレンジがあることを、少しでもお伝えできたのであれば幸いです。
 
(2022年度訪問時、左から)
木村弁護士、福島弁護士、柴原弁護士、根本弁護士

プロジェクトメンバーMember

80件余りの企業の再生・倒産案件を踏まえ、多角的な観点から、M&A、ファイナンスの調達、私的整理における金融機関とのコミュニケーションに尽力。また従来より、上記案件に加えて、幅広く利害の対立する事業継承案件(家族憲章の作成等)に注力するとともに、クライアントおよびクライアントの属する業界環境・経済的実態を踏まえ、複数の訴訟案件に対応する。。

複雑なM&A案件を多数手掛け、依頼者に寄り添って真摯なアドバイスを行っている。M&A関連の紛争の経験も豊富であり、創業家株主のいる会社の諸問題にも精通している。近時は、ビジネスと人権、インパクト投資等の案件にも多く携わっており、サステナビリティの観点から企業にアドバイスを行っている。また、プロボノ案件も積極的に行っており、日本で有数の経験を有する。

木村 響Hibiki KIMURA

  • アソシエイト
  • 東京

吉井 一希Kazuki YOSHII

  • アソシエイト
  • 東京