Minoru NAKAZATO 中里 実
西村高等法務研究所
所長
昭和53年に大学を卒業して助手として研究室に残り、その後、一橋大学と東京大学において、租税法の研究と教育に従事してまいりました。その中でも、特に専門領域としてきたのは、ファイナンス取引等の国際課税という実務的な研究と、ヨーロッパの中世以来の議会の財政権の歴史という基礎的な研究という、かなり異なる内容の二つの分野です。このように一見無関係に見えるような二つのテーマが、実は、複合的に結びついており、その結果として、例えば、国王と議会の政治的対立の中で、マグナカルタや名誉革命等を通じて歴史的に形成されてきた議会の財政権のあり方により、それぞれの国における市場取引尊重の程度が異なり、そのことが国家の経済発展の差異をもたらすことさえあったという議論が新制度派経済学において行われている点は、驚くべきことです。
実際、課税権の基本に遡るような基礎的研究を前提として、デリバティブや仕組み債といった現実の経済取引の私法的・経済的基礎を踏まえ、それらに関する課税のあり方について、議会、課税庁、裁判所の間の相互関係を正確に認識した上で実務的な考察を行うことは、実に楽しい作業です。
学歴 Education
- 1978
- 東京大学法学部卒業
経歴 Professional Experience
- 東京大学法学部 助手
- 一橋大学法学部 助手
- 一橋大学法学部 講師
- UCLA School of Law. 客員教授
- 一橋大学法学部 助教授
- 東京大学大学院法学政治学研究科 助教授
- 兼 一橋大学法学部 助教授
- 東京大学大学院法学政治学研究科 教授
- 兼 一橋大学法学部 助教授
- 東京大学大学院法学政治学研究科 教授
- Harvard Law School 客員教授
- 東京大学名誉教授
主な論文/著書Representative Publications
- 『国際取引と課税』(有斐閣、1994年)
- 『金融取引と課税』(有斐閣、1998年)
- 『キャッシュフロー・リスク・課税』(有斐閣、1999年)
- 『Japanese Law: An Economic Approach』(University of Chicago Press、1999年、ハーバード・ロースクールのマーク・ラムザイヤー教授と共著)
- 『タックスシェルター』(有斐閣 、2002年)
- 『デフレ下の法人課税改革』(有斐閣 、2003年)
- 『財政と金融の法的構造』(有斐閣、2018年)
- 『租税史回廊』(税務経理協会、2019年)
- 『法人税の研究:租税法論集I』(有斐閣、2021年)
- 『租税法の潮流I:課税問題の変遷』(税務経理協会、2021年)
- 『租税法の潮流II:金融取引の課税』(税務経理協会、2021年)
- 『租税法の潮流III:所得課税の争点』(税務経理協会、2022年)
- 『租税法の潮流IV:税制改革の背景』(税務経理協会、2022年)
- 『所得税の研究:租税法論集II』(有斐閣、 2022年)