

- プロボノ
- コミュニティ
- DE&I
出張教室及びキャリアガイダンス(洗足学園高等学校)
ー西村あさひの法教育プロジェクト
出張教室のきっかけと準備
西村あさひ法律事務所・外国法共同事業では、法律家としての考え方や弁護士・法曹というキャリアについて中高生に伝える法教育活動を行っているところ、洗足学園高等学校(以下「洗足学園」といいます。)の卒業生である杉本遥弁護士が、同校の先生方とご相談を重ね、出張教室及びキャリアガイダンスを企画しました。
出張教室では、当事務所所属の根本剛史弁護士、杉本遥弁護士、厳佳恵弁護士、宮野恵弁護士が出張教室の講師となりました。参加する生徒一人ひとりに法律家としての思考を体感してもらい、法学や弁護士の仕事の面白さを体感してもらうため、講義形式ではなく、生徒参加型のロールプレイングを実施することとしました。難解で抽象的なイメージが持たれやすい法の世界の面白さが伝わるよう、専用のケーススタディを新たに作成し、議論を重ねて準備を行いました。当日は、高校1年生の希望者が参加し、チームごとに分かれて模擬交渉を行いました。

出張教室の概要
出張教室は、法学へのイントロダクションと企業法務へのイントロダクションの2部構成としました。
法学へのイントロダクションでは、刑法の一行事例の検討を行いました。実際に六法をめくってもらい、刑法の条文を読んでもらいながら、事例の行為がどのような罪にあたりうるかを検討してもらいました。条文だけでなく、判例や学説などの様々な議論に触れなければ適切な法的評価ができないこと、法的評価の前提として事実認定も鍵となることなどを学んでもらえるよう構成しました。

企業法務へのイントロダクションでは、企業法務の面白さを体感してもらうことを目的に、株式取得の場面を想定して、売主側の代理人と買主側の代理人として、模擬契約交渉に臨んでもらいました。模擬契約交渉は、当事者の利害が相反している場合に、交渉によって、その利害を調整し、妥当な解決を目指すことを目的とするものです。具体的には、アパレル会社間の統合において、キーパーソンの転籍の問題と、環境問題について、当事会社間で意見が分かれているところ、どのように依頼者の利益を確保しつつ契約をまとめるかを話し合ってもらいました。
これらのケーススタディは、細かく設計されたシナリオに基づき行われました。法学へのイントロダクションでは、事例の行為が何の罪にあたりそうか、生徒の自由な発想から入っていきましたが、行為態様に着目する生徒、結果に着目する生徒、保護法益に着目する生徒など様々な生徒がおり、互いの考えを聞いて視野を広げていく様子が見られました。企業法務へのイントロダクションでは、依頼者へのヒアリング、交渉戦略の検討、及び実際の交渉を続けて行い、1度目の交渉を経て改めて交渉戦略を練り直し、最終交渉に臨んでもらいました。授業は3時間と長きにわたりましたが、生徒の皆さんは積極的に取り組み、少しでも良い結論を導き出そうと粘り強く議論を行っていました。
キャリアガイダンス

生徒の方からいただいた感想
「弁護士の方の普段のお仕事の一部を模擬体験することができて貴重な経験になった。それと同時に交渉することの難しさを感じた。弁護士の方は法廷で被告人の弁護をするというイメージがあったが、会社間の揉め事を弁護士を通じて解決することも多いと聞き仕事内容の幅広さを感じた。」
「途中で、依頼者が何を求めているのかを忘れてしまい自分たちだけで解決策を考えてしまっていたが、依頼者の意見を聞いて双方の利益を考えながら進めていくことが大切だと思った。」
「交渉を進めるに当たって、依頼主の望みを叶えるためにも、相手にちゃんと自分の意見が正しく伝わるように言うのが大切だと思った。」
「実際に友達と考えながらどのような選択肢が一番平和な解決法なのか探るのも楽しく、法学部や弁護士の仕事により興味を持つことができた。」

参加講師の感想
根本 剛史 弁護士
模擬契約交渉では、生徒の皆さんが主体的に考える姿勢が印象的で、また、予想以上に多様で鋭い意見が出されていて議論の活発さに感銘を受けました。また、弁護士の仕事の幅広さや多様なキャリアについて知って頂いたことで、生徒の皆さんの進路選択の一助となったのであれば大変嬉しく思います。
杉本 遥 弁護士
模擬契約交渉では、「会社が会社を買うとはどういうことか」「契約とは何か」といったところからスタートする必要があったので、内容が重く、かつ難しすぎるのではないかと不安に思っていました。しかし、当日は生徒の皆さんの積極性と思考力が存分に発揮され、白熱した議論が展開されました。中には、弁護士が想定していなかった細かい事実までヒアリングしてくれた生徒もおり、驚かされました。
インターネットや本を開けば、進路や職業に関する情報は溢れていますが、職業の「手触り」のようなものを得る機会はなかなかないのではないでしょうか。今回、六法をめくったり、模擬契約交渉を体験したりする中で、私自身が高校生の時に欲しいと思っていたそのような「手触り」を、生徒の皆さんに提供できていれば、嬉しく思います。
厳 佳恵 弁護士
模擬契約交渉では、生徒の皆さんは、初めて企業法務に触れることから、馴染みのない概念や考え方に戸惑うことも多々あったのではないかと思いますが、一つ一つの論点について、頭を悩ませながらも、様々な観点から議論されていたのが印象的でした。企業法務の業務内容は、社会に出るまではなかなかイメージしづらいように思いますが、今回の出張教室をきっかけとして、将来の選択肢の一つとして知っていただき、少しでも関心を持っていただけたなら嬉しいです。
また、キャリアガイダンスでは、多様な経歴の弁護士の話を聞いていただいたことで、必ずしも高校時代の進路選択が全てではないということも含め、将来の選択の幅広さを知っていただけたように思います。今回の経験が、生徒の皆さんの進路選択に少しでも役立てば幸いです。
宮野 恵 弁護士
模擬契約交渉では、企業法務の世界に初めて触れる生徒の皆さんにとってはやや高度な課題をご用意しましたが、我々の予想以上に主体的に、また、鋭い着眼点を持って議論・交渉に臨まれる姿が大変印象的でした。模擬契約交渉を通して、弁護士という職業や企業法務という分野について少しでもイメージを持っていただけたのであれば幸いです。
キャリアガイダンスでは、法律に関わる職種や分野が多岐にわたることをご紹介するとともに、実際に業務に携わっている当事務所の弁護士からの生の声をお届けしたところ、それらを踏まえた生徒の皆さんの積極的に質問や意見交換に感銘を受けました。今後、数多くの選択肢の中から進路を選ばれる生徒の皆さんにとって、今回の経験がその一助となれば大変嬉しく思います。
複雑なM&A案件を多数手掛け、依頼者に寄り添って真摯なアドバイスを行っている。M&A関連の紛争の経験も豊富であり、創業家株主のいる会社の諸問題にも精通している。近時は、ビジネスと人権、インパクト投資等の案件にも多く携わっており、サステナビリティの観点から企業にアドバイスを行っている。また、プロボノ案件も積極的に行っており、日本で有数の経験を有する。