ミャンマー在外国民の課税問題から見える『責任あるビジネス』の実践と対話の重要性
はじめに - ビジネスと人権から考える「人権リスク」
今回お話したいことは、企業が責任あるビジネスを実践する上で重要な「ビジネスと人権」に関する考え方です。
近年、特に、企業経営における重大な関心事の1つとして注目されているのが、人権リスクです。人権リスクとは、企業のビジネス活動が他者の人権を侵害する可能性を指します。人権リスクへの不適切な対応は信頼を損ね、ひいては企業にとっても重大な悪影響に繋がる可能性があります。企業は、人権リスクを正確に理解し、誠実に対応することが求められています。
ビジネスと人権について語られるとき「企業からではなく、人から見る」ということがよく言われます。企業は、「自社にとってどのような影響があるか」ではなく、人権を侵害される(可能性のある)「人」の立場から自社の対応を考えるべきということです。この概念自体を、言葉で説明すると一応の理解はいただけているように見えるのですが、実際に企業がこの考えに沿って行動するのは難しい場合が少なからずあるようです。今回はこのギャップについて、最近の事例をご紹介しながら、考えていきます。
ミャンマー課税問題に対する日本企業の反応
「ビジネスと人権」を考える上で日本企業が取るべき行動
冒頭で触れたように、「ビジネスと人権」における人権リスクを考える際には、企業ではなく人の視点から問題を捉えることが重要です。
今回の問題の中心と考えるべきは、日本で働くミャンマーの人々の立場です。税金を納めることで職を失ったり、就職の機会を逃したりすることをミャンマーの人々は望むでしょうか?特に、近時導入された徴兵制により、身の安全を確保するため連日若者がミャンマーを脱出しています。そのようなことはどう考えるのでしょうか。
企業側としては、自社の従業員が合法的に日本で働き続けられるように適切なサポートをすることが期待されます。例えば、在日ミャンマー人の従業員が、ミャンマーの税金を支払わずにパスポートを失効させてしまうと、日本に合法的に滞在し、働くことが困難になります。
視点を変えて、日本人が海外で働く場合、多くの日本企業は入国するためのビザや在留許可の手続きを当然のようにサポートします。企業が従業員の合法的な滞在と就業を保証するという点では、どちらの場面も根本的には同じとも考えられ、ミャンマーのケースにおいてもしかるべき支援をするというアプローチも考えられます。
責任あるビジネスには「エンゲージメント」の概念の理解が不可欠
「人権リスク」に対応できる企業になるために