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ご挨拶

2007年4月に発足した西村高等法務研究所は、法理論と法実務の架橋をめざす研究機関です。

法律学は、医学と同様、宿命的に実務を前提とする学問です。それ故に、法律分野における理論と実務の間には密接不可分の関係が存在します。理論の裏付けのない実務はもろく、実務を背景としない理論は空虚です。私自身、法律学の研究者として、実務を無視した理論がいかにむなしいものであるか、常々、身にしみて感じております。このような実務と理論の密接な関係を前提として、法実務の世界から法理論の世界に切り込もうというのが、西村高等法務研究所の設立の趣旨です。

もちろん、理論と実務の架橋と一口に言っても、それは、いうは易く、行うは難い試みであるかもしれません。それにもかかわらず、その点を十分に理解しつつも、その目的を果敢に達成すべく、法律事務所があえて研究所を設立したというまさにその点に、本研究所設立時の小杉先生のご挨拶に現れているような、当時の熱気を感じ取ることができます。私自身、この研究所設立当時、設立に携わった先生方の真摯なお考えをお聞きし、その構想の壮大さに圧倒されたことを現在も鮮明に覚えております。

初代の所長に落合誠一先生をお迎えした西村高等法務研究所は、その後、中山信弘所長に引き継がれ、現在に至っております。その活動は、研究会や講演会の開催、出版物の発行等、多岐にわたりますが、いずれの場合においても、理論と実務の架橋という当初の理念が今もそのまま引き継がれています。このように引き継いできた伝統を、後の世代のためにさらに発展させていくことこそが、現在の私達に課された使命であるように思われます。

自己規定はしばしば本質を決定します。人間も組織も、自らがそうであると考えることにより、徐々にそのようになっていくという、自己実現予言の世界が現実に存在します。したがって、理論と実務の架橋を目指す高等法務研究所として自己を規定することにより、時の流れの中で、将来におけるこの研究所の本質がより明確なものとして明らかにされていくことでしょう。

以上の次第で、今後とも、西村高等法務研究所においては、設立当時からの理念を掲げ続けながら、日本における法律実務と法理論のさらなる融合を目指し、将来に向けた真摯な努力を一歩ずつ続けていくつもりです。

中里 実Minoru NAKAZATO

  • 西村高等法務研究所
  • 所長

昭和53年に大学を卒業して助手として研究室に残り、その後、一橋大学と東京大学において、租税法の研究と教育に従事してまいりました。その中でも、特に専門領域としてきたのは、ファイナンス取引等の国際課税という実務的な研究と、ヨーロッパの中世以来の議会の財政権の歴史という基礎的な研究という、かなり異なる内容の二つの分野です。