コスモエネルギーホールディングス株式会社:有事導入型買収防衛策が定める手続を遵守しない同意なき買収提案に対する対抗措置の条件付き発動および同手続を遵守した同意なき買収提案に対する対抗措置の発動
西村あさひは、コスモエネルギーホールディングス株式会社(以下「コスモエネルギー」)の取締役会が、村上世彰氏が実質的に支配する株式会社シティインデックスイレブンス(以下「シティインデックスイレブンス」)による同意なき大規模買付行為等提案に対し、有事導入型の対応方針(以下「本件対応方針」)を導入し、①シティインデックスイレブンスが本件対応方針の定める手続(以下「本件手続」)に従うことなく大規模買付行為等に着手する可能性があったことに対して、本件対応方針に基づく対抗措置(以下「本件対抗措置」)を条件付きで発動(以下「第1回本件対抗措置発動」)すると共に、②その数か月後にシティインデックスイレブンスが本件手続に従う大規模買付行為等に着手したことに対して、本件対抗措置を発動(以下「第2回本件対抗措置発動」)した事件(以下「本事件」)において、コスモエネルギーを代理しました。
本事件では、①(i)第1回本件対抗措置発動が、シティインデックスイレブンスによる本件手続を遵守しない態様での大規模買付行為等の着手を「条件」とするものであった点、(ii)コスモエネルギーの定時株主総会において、第1回本件対抗措置発動の承認に係る決議が、シティインデックスイレブンスらおよびコスモエネルギーの取締役並びにそれらの関係者を除く出席した一般株主の議決権の過半数(いわゆるMajority of Minority)によりなされた点、②従来、対応方針が導入された会社において、大規模買付者は、対応方針所定の手続を遵守せずに大規模買付行為等を実施することが多かったところ、シティインデックスイレブンスによる本件手続を遵守した大規模買付行為等に対し、第2回本件対抗措置発動で対抗した点などが焦点となりました。最終的に、シティインデックスイレブンスは、第2回本件対抗措置発動について株主の承認を得るために開催予定であったコスモエネルギーの臨時株主総会の開催直前に、保有するコスモエネルギー株式のほぼ全量を岩谷産業株式会社に売却すると共に、大規模買付行為等趣旨説明書を取り下げ、コスモエネルギーが全面的に目的を達成しました。
本件は、当事務所の太田洋弁護士、松原大祐弁護士、石﨑泰哲弁護士、森田多恵子弁護士、桜田雄紀弁護士、美﨑貴子弁護士および安井桂大弁護士が、エリザベス・キャンツ フロリダ州弁護士、藤田晃弁護士、日野雄介弁護士、井戸田紘記弁護士、川本楓弁護士、湊川智平弁護士、白澤秀己弁護士、谷山風未花弁護士および吉田光太郎弁護士とともに担当しました。
弁護士等 People
コーポレート/M&A分野のパートナーとして、国内外のM&A案件、株主総会対応、会社関係訴訟、コーポレートガバナンス、ジェネラルコーポレート等、企業法務全般を幅広く手がける。 豊富な知識と経験をもとに、大規模な案件や高度の専門性が求められるコーポレート/M&A案件に強みを有する。日本航空株式会社の会社更生申立案件、サントリーホールディングス株式会社によるBeam Inc.の買収案件、シャープ株式会社による鴻海精密工業股份有限公司に対する第三者割当増資等に関与。 また、近時は敵対的買収案件、アクティビスト対応案件も数多く手がける。東芝機械株式会社(現:芝浦機械株式会社)に対する株式会社オフィスサポートからの敵対的TOBへの対応案件(有事導入型買収防衛策の第1号案件)、インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人に対するスターウッド・キャピタル・グループによる敵対的TOBへの対応案件、株式会社東京機械製作所に対するアジア開発キャピタル株式会社による敵対的な株式の市場買増しへの対応案件(最決令和3年11月18日資料版商事法務453号(2021)97頁)等に関与。
令和元年(2019年)から令和4年(2022年)まで3年間、財務省に大臣官房企画官(任期付公務員)として勤務。在任中、2019年の外国投資家による上場企業の株式取得に係る事前届出の閾値を10%から1%に引き下げることなどを内容とする外為法改正の制度設計・立案を担当。 改正法施行以降は、事前届出に係る指定業種の見直し(感染症に対する医薬品・医療機器、重要鉱物資源関係の追加)、審査・モニタリング等の運用強化、米CFIUSをはじめとする同志国の関係機関との投資審査における連携強化、ロシアのウクライナ侵攻を受けた令和4年の外為法改正(暗号資産関連)、ロシア向け新規投資禁止などに携わる。
また、OECD(経済協力開発機構)の主催する加盟国の投資担当者向のウェビナーにおいて、スピーカーを務めている。
May 2021 – Webinar on Transparency, Predictability and Accountability for investment screening mechanisms
May 2022 – Regulatory proportionality of investment screening mechanisms
美﨑 貴子 Takako MISAKI
- パートナー
- 東京
危機管理案件を中心に、問題発覚を受けた社内調査、当局対応、訴訟対応等のほか、再発防止策の構築に関するアドバイスを行う。製造業の品質問題、営業秘密の漏洩、従業員による不正行為等の案件を広く取り扱うが、特に2014年から2017年にかけて証券取引等監視委員会に勤務した経験を活かし、インサイダー取引や相場操縦、開示規制違反などの金融商品取引法違反事件を中心に豊富な実績を有している。近時は不適切会計事案における調査委員会の調査対応も複数行っている。 豊富な実績に基づき、調査対応にとどまることなく、問題発覚時の初動対応から、総会対応や顧客対応等、問題の解決に向けた総合的な助言を行う。
金融庁企業開示課においてコーポレートガバナンス・コードおよびスチュワードシップ・コードの改訂を担当。また、世界有数の長期アクティブ運用機関であるフィデリティの日本拠点(フィデリティ投信株式会社運用本部)へ出向し、エンゲージメント・議決権行使およびサステナブル投資の実務に従事した経験を有する。これらの経験を踏まえた豊富な知見に基づき、コーポレートガバナンスやサステナビリティ対応、M&A、株主/ステークホルダーアクティビズム対応、SR対応等の幅広い案件において、多様なステークホルダーの利害を想定した戦略的視点を踏まえたアドバイスを提供する。関連する企業実務課題に関する書籍・論文の執筆やセミナー・講演への登壇も多数。担当した株式会社スノーピークのMBOによる非公開化案件がIFLR Asia-Pacific Awards 2025のPrivate Equity部門でショートリストに選出。
敵対的買収・アクティビスト対応、クロスボーダー案件を含むM&A取引、コーポレート・ガバナンスその他のコーポレート案件、国内・国際税務案件、個人情報・パーソナルデータ保護案件を中心に、企業法務全般を幅広く手がけており、日本経済新聞社による「企業が選ぶ2022年に活躍した弁護士ランキング」では、企業法務分野(1位)にランクインしており、同じく「企業が選ぶ2021年に活躍した弁護士ランキング」では、企業法務分野(2位)に、また「企業が選ぶ2020年に活躍した弁護士ランキング」では、M&A分野(1位)、企業法務分野(3位)にそれぞれランクインしている。 また、会社法、金融商品取引法、租税法、個人情報保護法等を巡る最先端の問題についてアカデミアと実務とを架橋する研究・執筆活動に力を入れており、『M&A・企業組織再編のスキームと税務〔第4版〕』、『M&A法大全〔全訂版〕(上)(下)』、『新株予約権ハンドブック〔第5版〕』、『個人情報保護法制大全』、『種類株式ハンドブック』、『令和元年会社法改正と実務対応』、『バーチャル株主総会の法的論点と実務』など、編著者として編集・執筆した書籍・論文は多数に上る。